ベルリンのITスタートアップで働くジャバ・ザ・ハットリの日記

日本→シンガポール→ベルリンへと流れ着いたソフトウェアエンジニアのブログ

「就職相談を親にするのは地獄の始まり」って。だから地獄行きの準備をしているところだ

わりとおもしろい記事を読んだが、そこから記事の趣旨とはちょっと異なった感想を持った。2人の娘を持つ親の目線として「就職相談を親にするのは地獄の始まり」には全面的に同意する。だから地獄行きの準備をしているところだ、と。


読んだ記事というのがこれ。
www.businessinsider.jp

記事より抜粋

今の時代、正社員であることが大事なわけでも、大学を卒業してそのまま就職することが絶対に正しいわけでもない。かつての正解は正解ではない。1970年代の就職人気企業ランキングを見ると、今は事実上倒産した企業やダメになった企業も入っています。常識はすぐに変わるもの。親の意見は参考するくらいにとどめて、できるだけ幅広いジャンルの人に意見を聞くのがいいと思います

 
私自身はITスタートアップへの転職を何度も繰り返し、また住む場所も日本→シンガポール→ベルリンと移して、記事に書かれているような終身雇用モデルや日本的な正社員モデルとは無縁に生きている。仕事や会社なんてたくさん転職していろんな経験した方が面白いに決まっているし、住まいにしても国境を越えて引っ越しすれば付き合う人も考え方も多種多様になって面白い。
この生き方が「新しい」というカテゴリーに入るのかどうかは分からないが、国境を越えて仕事を見つけてそこに移住するスキルについては日本で暮らす平均的なサラリーマンよりは持っている方だ。国際的な人脈についても国境越えの移住を繰り返したことと職場が多国籍集団であることも手伝って、かなりある方だと思っている。

つまりは「多少は世界の事情に詳しい」という無駄なおごりがある。まずこれがクセものなのだ。

2人の娘は親と一緒にいろんな国を幼少の頃から経験してきた。彼らの交友関係もかなり多国籍だ。たまに友達の名前を話してくれるのだが、「スーザン」とか「ナタリー」ぐらいならどこかの女の子だなと想像できる。それに加えて「え?それどこの子の名前?」という感じの聞いたことない名前がたくさん出てくる。
そして彼らはそれを特別なこととは一切思っていない。
日本で生まれてオッサンになるまでどっぷり日本で過ごした私は「国際性」に対して頭で理解している部分がある。ところが娘達にとってはそれは空気のように生まれた時から身の回りに存在していて、頭で理解するのではなく、あるがままを体で感じているだけのようだ。

先日、学校の課題でビデオ作品を同じクラスの子供たちと共同で作ることになった。そこで娘はシンガポールに在住していた際の友人達にも協力してもらって、ひとつの作品を作ることにした。そのためにはベルリンのインターナショナルスクールに通う多国籍な友人達とシンガポール在住のこれまた多国籍な友人達をまとめなければならない。

ある日、娘達が日本で暮らす私の両親(娘からすれば祖父母)とスカイプでその作品の話をした。団塊の世代で同じ会社を勤め上げて生きてきた祖父母たちとインターネット世代でかつ国を転々とした国際人の娘達との会話はどこかズレていた。娘が一生懸命にビデオ作品を説明しているのだが、祖父母にとっては話の前提から「?」な様子だった。

まず娘にとって英語とネットを使えば地球の裏側に住む友人であっても、繋がっているのでそこを特別に意識する必要は無い。そんな「普通のこと」はどっちでもよく、ビデオ作品の方に注力している。ところが祖父母にとってはなぜ小学生の小さな孫がいろんな国の人と共に作品つくりができるのか?、そのこと自体が異様でなんかすごいように感じてしまう。

ばあちゃん「え?どうやってそんなことができるの?なんで?」
娘「それはネット使えばできるの。でね。。。。(自分の言いたいこと)」
じいちゃん「どうやってシンガポールに住んでるブラジル人のお友達と話するの?」
娘「みんな英語できるから。でね。。。。(自分の言いたいこと)」

結局最後まで祖父母は「???」のままだったに違いない。もう横で聞いていて、私から説明するのも面倒なのでだまって静観していた。

国際人でネット世代ド真ん中の娘達にとって「国境」に対する意識は私のとは大きく異る。また彼らにとって「働く」という概念もまた違う可能性がある。そういう固い話だけでなく、普段からちょっとしたことでも娘達に対して「こいつらは私とは違う」をよく連想している。

そんな娘が働くような年齢になって「今度***して働くつもりだ」と言ってきた時に私にはその意味が理解できないかも、という不安がある。それがタイトルに記載した「地獄」のことだ。
育てた娘達に「分かってないなー」なんて言われたくねーし、思われたくもない。「だいたいテメーらがペラペラ英語しゃべっていろんな国の友達ができるようになったのは誰のおかげだと思ってんだ」などというセリフが出てきそうだ。

そうならないためにできるだけ遠くに移動し、知らないことにも首を突っ込み、よく知らない所から来た人とも会話を交わして、精進しなければ、と思った次第。

せめてもの、多少なりとも、最低限として、娘達が働くようになって相談がてら「今度**しようと思うんだよね」と言った時にその意味ぐらいは掴めるような感性を持っていたいと思っている。
そしてそれは決してカンタンではないことぐらいは分かっているつもりだ。

 
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書評『年収は「住むところ」で決まる 』はこれからの住まい選びに参考にするべき1冊

『年収は「住むところ」で決まる 』(著:エンリコ モレッティ)を読んだ。これは特に海外転職において「住むところ」選びをする際に、ぜひとも参考にすべき1冊だった。

年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学

年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学

タイトルにある「年収」について本書ではそこまで言及されていない。単にキャッチーなタイトルを付けただけで、本書の内容を端的に言い表しているのは副題の方。その副題が「雇用とイノベーションの都市経済学」。多くの資料とデータを使って都市経済の移り変わりを説明している。それらは「誰もが知っているけど、その理由がいまいちうまく説明できないこと」だ。

例えば「シリコンバレーはIT産業のメッカのひとつであり、数多くのIT企業がそこに集積していること」これは誰もが知っている事実ではあるが、なぜ特定の地域に同種の業態の会社や人材が集まっているのか、を論理的に説明するのは難しい。

IT産業といえば最もリモートワークに適して産業であり、ソフトウェアエンジニアにいたってはネットさえ繋がればどんな田舎でも働くことが可能だ。実際にそうした働き方を実践している人もいるが、都市単位で見た時にはそれとまったく逆のことが起きている。シリコンバレーやベルリンなどのIT都市に多くのITエンジニアたちが惹きつけられ、人がさらに人を呼びその集積化がより一層高まっている。
これと逆に今までアメリカ国内にあったが国外に流出しているのは工場など。誰もが知るようにiPhoneはDesigned by Apple in Californiaであって、それを作っている工場は中国だからMade in China だ。アメリカやシリコンバレーでは工場で働いていた人の雇用は失われ、その代わりにソフトウェアエンジニアリングやデザインなどの高度人材に対する需要がずっと高まっている。

興味深いのは工場などの生産部門は比較的容易に場所の移転が可能だがイノベーションに関わる部門はほぼ移転が不可能ということ。孤立した環境では革新的なアイデアの実装が不可能であり、そのためにはその企業だけでなく都市単位でのエコシステムが重要になってくる。

都市で働く人材は同じような人材とのつながりを持ち互いの所得を高めてしまう。つまりクリエティブな人達に囲まれていると、自分自身もよりクリエティブになり、生産性が上がる。ハーバード大学は同医学部の研究者たちが発表した医学論文をすべて洗い出し、共同執筆者たちの研究室の間の距離を調べたところ、それが1キロ未満だと、質の高い論文が書かれている傾向にあることが分かった。

またある都市でイノベーション産業の新たな雇用が1つ生まれると、それ以外の業種の雇用が5つ作り出されている。科学者やソフトウェアエンジニアの雇用が増えれば、タクシー運転手、家政婦、ベビーシッター、美容師、医師、弁護士、犬の散歩人、心理療法士など地域のサービス業に対するニーズが高まるからだ、と。

こうして発展する都市はどんどん加速度を高めて発展し、衰退する所はどんどん人材が流出して衰退してしまう。統計上アメリカの都市間の格差はずっと広がっており、格差が収まる気配は一切無い。

住む場所と職場を変えることがどれほど人生に影響するか、に関して私も身をもって実感している。日本→シンガポール→ベルリンへと家族と共に移住を繰り返し、周りの影響を受けて生活が激変し続けている。住む場所や住む国は惰性で決めてしまいがちだが、それはもろに生活に直撃する。

シンガポールから次の移住先を探す際に資料をよく読んで都市ごとの統計を比較した。その時は本書を読む前だったのでベルリンがIT都市として抜き出てきていることと、IT投資額がやけに高いな、と思っただけだった。
ただこうして本書を読んだ後、ITエンジニアとしてのキャリアを考えた際に住むところ選びはとてもとても重要だっだのだな、と思った。

人間は傲慢なので自分の給料が上がった時に「給料が上がった理由?そりゃあ俺様が仕事をがんばったからに決まってるだろ」と思いたい。しかし実際には都市単位で考えて「あなたのがんばりよりも都市の機能として、あんたの住んでいる都市全体の給料が上がる仕組みがあって、そこにたまたま乗ってただけなんですよ」となっている可能性が高い。

「広がってしまった都市と地方の経済格差を埋めなければならない」という、地域格差是正論がある。しかしなぜ地域格差是正しなければならないのか、という疑問に対して誰もが納得できる答えを持っている人は居ない。本書ではただ淡々と事実をもとにその格差の原因を突き止めている。地域格差は歴然とあってそれは今後さらに広がり続ける。

個人的には国境をまたいで様々な国への移住を繰り返すスタイルが好きだが、そんなことを誰かに強要しようなんて思う訳がないし、生まれ故郷を離れずにずっとそこで暮らし続ける人生を否定することもない。どこに住むかはその人次第だが、その「住むとこ」選びにとても参考になる1冊となった。

ということで自身としてはこれからも最先端のIT都市に住み続けたいなー、と思った次第。

年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学

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格差の壁をぶっ壊す! (宝島社新書 311)

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Rails 5.1のwebpack (gem無し)を使ってReact, Redux, Material-UIの環境構築

RailsのViewをReactにする場合のお手軽な環境構築としては少し前ならreact-railsやreact_on_railsといったGemを使って統合していた。それもRail 5.1になってGem無しでもカンタンに環境構築が可能になった。もちろんGemを使えばそれらに付随する機能が使えて便利な面もあるが、「無しでもカンタンにできる」というのはありがたい。またRail標準としては「これからJavaScriptフォルダ配下のpackにReact関連コードを置きます」とかやられると、一応Rails標準というものを知っておいた方がよさそう。
ということでRails 5.1のwebpack (gem無し)を使ってReact, Redux, Material-UIの環境構築を書いた。

$ ruby -v
ruby 2.3.3
$ rails -v
Rails 5.1.1
$ npm -v
4.0.5

railsのバージョンが5.1であることを確認した後、rails newを--webpack=react指定で実行する。
実行後の出力結果を見るとwebpacktやらyarnがあることが分かる。

rails new myapp --webpack=react
 :
 :
Using rails 5.1.1
Using sass-rails 5.0.6
Bundle complete! 17 Gemfile dependencies, 71 gems now installed.
Use `bundle show [gemname]` to see where a bundled gem is installed.
       rails  webpacker:install
Copying webpack core config and loaders
      create  config/webpack
      create  config/webpack/configuration.js
 :
 :
$ brew upgrade yarn
success Saved 562 new dependencies.
├─ abbrev@1.1.0
├─ acorn-dynamic-import@2.0.2
├─ acorn@5.0.3
├─ ajv-keywords@1.5.1
 :
 :
yarn add v0.23.4
[1/4] 🔍  Resolving packages...
[2/4] 🚚  Fetching packages...
[3/4] 🔗  Linking dependencies...
[4/4] 📃  Building fresh packages...

フォルダ構成が以下のようになっている。これからはapp/javascript/packs配下に入れるのが標準とのこと。

app/javascript
└── packs
    ├── application.js
    └── hello_react.js

packsに入っているhello_react.jsはこのように単純なReact component。
単にHello Reactと出力しているだけ。早速これを使って動作を確認してみる。

import React from 'react'
import ReactDOM from 'react-dom'
class Hello extends React.Component {
  render() {
    return <div>Hello {this.props.name}!</div>
  }
}
document.addEventListener("DOMContentLoaded", e => {
  ReactDOM.render(<Hello name="React" />, document.body.appendChild(document.createElement('div')))
})

サンプルの動作を見るために以下のコマンドでpages controllerを作る。

bundle exec rails g controller pages index

pagesのindex.html.erbに javascript_pack_tag を追記する。

# app/views/pages/index.html.erb

<h1>Pages#index</h1>
<%= javascript_pack_tag 'hello_react' %>

javascript_pack_tag のロードを有効にするため webpack-dev-serverの設定をdevelopment.rbに記載。

# config/environments/development.rb

Rails.application.configure do
 :
 :
  config.x.webpacker[:dev_server_host] = "http://127.0.0.1:8080"
end

サンプルの動作を確認するためrails サーバーを立ち上げる。

bundle exec rails server

別のターミナルから以下のコマンドを実行しwebpack-dev-serverを立ち上げる。つまりrails sserverだけではサンプルを見ることができない。

./bin/webpack-dev-server --host 127.0.0.1
  :
  :
  [164] ./app/javascript/packs/application.js 515 bytes {1} [built]
  [266] multi (webpack)-dev-server/client?http://127.0.0.1:8080 ./app/javascript/packs/application.js 40 bytes {1} [built]
     + 70 hidden modules
webpack: Compiled successfully.

ここでローカルホストの以下のページにアクセスする。Hello Reactが見えたら無事に動いていることになる。
http://localhost:3000/pages/index

f:id:tango_ruby:20170515051616p:plain


この時点ではReactが入っているだけでRedux, Material-UIがまだ入っていない。
以下のコマンドで入れる。

npm install --save redux
npm install --save react-redux
npm install --save-dev redux-devtools
npm install --save material-ui
npm install --save react-tap-event-plugin

コマンド実行後にpackage.jsonを確認すると以下のようにインストールされていることが分かる。

{
  "name": "myapp",
  "private": true,
  "dependencies": {
    "autoprefixer": "^7.0.1",
    "babel-core": "^6.24.1",
    "babel-loader": "7.x",
    "babel-preset-env": "^1.4.0",
    "babel-preset-react": "^6.24.1",
    "coffee-loader": "^0.7.3",
    "coffee-script": "^1.12.5",
    "compression-webpack-plugin": "^0.4.0",
    "css-loader": "^0.28.1",
    "extract-text-webpack-plugin": "^2.1.0",
    "file-loader": "^0.11.1",
    "glob": "^7.1.1",
    "js-yaml": "^3.8.4",
    "material-ui": "^0.18.1",
    "node-sass": "^4.5.2",
    "path-complete-extname": "^0.1.0",
    "postcss-loader": "^2.0.5",
    "postcss-smart-import": "^0.7.0",
    "precss": "^1.4.0",
    "prop-types": "^15.5.10",
    "rails-erb-loader": "^5.0.0",
    "react": "^15.5.4",
    "react-dom": "^15.5.4",
    "react-redux": "^5.0.4",
    "react-tap-event-plugin": "^2.0.1",
    "redux": "^3.6.0",
    "sass-loader": "^6.0.5",
    "style-loader": "^0.17.0",
    "webpack": "^2.5.1",
    "webpack-manifest-plugin": "^1.1.0",
    "webpack-merge": "^4.1.0"
  },
  "devDependencies": {
    "redux-devtools": "^3.4.0",
    "webpack-dev-server": "^2.4.5"
  }
}

以降はReduxやらMaterial-UIを使ってコードを書く。そこは長くなりそうなので書くとしても別記事にする予定。

結果としてはこんな感じでよくあるMaterial-UI風のページができあがる。個人的にはBootstrapは飽きたのでMaterial-UIがいいと思っている。フォーム押したときの下線がヒューっと出る動作とかが気持ちいい。

f:id:tango_ruby:20170516005313p:plain

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