ベルリンのITスタートアップで働くジャバ・ザ・ハットリの日記

日本→シンガポール→ベルリンへと流れ着いたソフトウェアエンジニアのブログ

英語しか使わない職場に英語がほとんどできないエンジニアが入ってきた話

移転しました。

今の会社はシンガポールのスタートアップで小さい会社ながら世界各国から人が集まり、会議、メール、ランチ中の小話まで全て英語で行われている。で、そんな会社になぜかほとんど英語ができないながら、入社してきた人がいる。

彼はアフリカ出身のTで母国語はフランス語だ。いったいどういう経緯ではるばるアフリカからアジアのシンガポールまで来たのかは正直私もまだよく分かっていない。出会ってから半年ほどになるが、なにより英語があまりできないから、そのような基本的なコミュニケーションがまだ取れていないのだ。でもこの「できなければ即クビ」が多いシンガポールのスタートアップにおいて、Tはクビになどならずに非常に重要な仕事を着々とこなしている。

Tが入社する前、会社に必要な技術があってその求人応募の広告を出した。すごくカンタンに言うとAとBとCの技術ができる人を求む。という感じだ。

で、来た候補者はざっと以下の感じだった。
Aが100%分かっていて、Bは70%、Cは知らないアメリカ出身の人。もちろん英語はネイティブ
Aが70%、Bが50%、Cが10%のアメリカのなんかいい大学を出た、マレーシア人。英語は完璧。
Aが100%、Bが90%、Cが30%の。。。。

という感じで、基本は全員が英語に問題は無いが技術的にはABCの中のどれかが足りない状態だった。入社した後に求めているポジションがとにかくA,B,Cと全部が揃っていることが必要だった。
そして前述のTが面談に来た。

日本人の私からすれば「母国語のフランス語と英語って多少は似たようなものである程度はできるんじゃないの?」と思っていたがTの英語はすさまじいぐらいにダメだった。誰がしゃべっても面談にならないから、社内にいるフランス人のOが間に入って通訳をしながら、面談をするありさまだった。普通ならこの時点でサヨナラだ。
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ただTには技術があった。びっくりするぐらいにABCの全てに対して100%なのだ。こんな奴がアフリカにも居るんだーと思った。

面談の後、エンジニア全員で会議になった。議論の内容は「いろんな候補者に来てもらったけど誰にオファーを出すか?」ではない。
その時の議論の内容はただ1点のみ「Tにオファーを出すか出さないか」だ。

結局今の局面を打開するにはABCの3つが揃っているTの力が必要だが、それにはOの通訳が常についてまわる。OはそれでもOkか?とみんなで確認した。Oは「まーしょうがねーな。Tも地頭は良さそうな奴だし、しばらく経てば英語ぐらいマスターするだろ。通訳するよ」と言ってくれて、みごとTにオファーを出すことになった。

半年経ったが、仕事の会話に関してはTはほぼOの通訳無しに誰とでもなんとかこなしている。仕事の会話が一番重要なので、それができればOKなのだ。そして技術者であれば、ランチ中の小話なんかより、仕事の会話の方がよほど楽というのが理由だろう。
ただ、普通の会話なんかは相変わらずダメ。

私はTのモニターでチャットの会話をグーグル翻訳で訳しているのを今でも見ている。そんなグーグル翻訳に頼ってしまうような人であってもA,B,Cとしっかりそろった技術のある奴は強いなーと思った次第。

これは特異な例だと思うが、もし海外転職を目指しているが英語が絶望的な人がいたとしてもたまにはスルッと英語ばっかりの会社に入れてしまうこともありますよ、という話。おそらくこれは人材豊富な大企業よりも伸び盛りで猫の手も借りたいスタートアップの方が可能性が高い。

あともうひとつTはその技術だけでなく類まれなる才能があるのを感じた。それはみんな英語ばっかりしゃべってる会社に全然英語ができなくて入ってきても

『オレの技術はサイコーだ。英語はよー分からんが、それがなんだ?』と平気な顔で毎朝出社できる面の皮の厚さだ。

これはホントに尊敬に値する。私だったらあそこまで英語ができなければもう少し物怖じしていただろう。

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