ベルリンのITスタートアップで働くジャバ・ザ・ハットリの日記

日本→シンガポール→ベルリンへと流れ着いたソフトウェアエンジニアのブログ

”今一番イケてる仕事”のイメージを一新する本『How Google Works』

移転しました。

今の勤め先のスタートアップの本棚に「How Google Works」が置いてあったが、しばらく読まずにいた。どうせ元CEOが書いた「自分の会社自慢本」なんておもしろない、と思っていたからだ。ところが同僚のスウェーデン人エンジニアのJ、アメリカ人エンジニアのA、インド人エンジニアのTがこぞって「これおもろかったよ」「オレって『スマート・クリエイティブ』だから」と明らかにこの本の影響を受けた発言をしだしたので試しに読んでみたら、見事にハマった。彼らが感化されたもの無理もない。

この本は「今一番イケてる仕事」のイメージを一新してしまう。本を読むまでは「は?スマートクリエイティブ?」だった。が、読んだ後は前述のJ、A、Tの前で私も「オレの仕事どう?スマートクリエイティブっぽいだろ?」と言ってしまった。

本書はGoogle元CEOのエリック・シュミット氏が入社したところから始まる。当時のGoogleは数十人の尖った個性のエンジニア集団からなる単に変なスタートアップだった。それまで名だたる大企業でCEO職を勤めてきたシュミット氏にとってGoogleではなにもかもが規格外だった。

まず今まであった立派なCEO室が無い。一応部屋っぽいところでCEOシュミット氏が仕事していると、エンジニアが入ってきて「スペースがないからここでコード書くわ」といきなり入ってきたと思ったら、次は机をのこぎりで切ってもうひとり分のデスクを作りはじめたり。

もし日本の大手企業でこんなことがあったらどうなるのだろう。

Googleでの変な行動はなぜか許されるだけでなく、これこそが次々に革新的なサービスをリリースするにいたる原動力らしい。詳しい理由は本書にある。少しここで紹介させていただくと、キーワードはスマートクリエイティブだ。

それは従来の意味での知的労働者とはまったく異なる人達。特定の任務にしばられていない。組織に束縛されることなく、自分のアイデアを実行に移すよう奨励されていて、そこで最大限の能力を発揮する人達のことをスマートクリエイティブと言う、と。

Googleではエンジニア達に(ほぼ)実現不可能な目標を立てるように促す。

Especially in Technology, change tends to be revolutionary not evolutionary.
テック業界における変化は進歩的ではなく革命的なことが起こりがちだから。

今ではGoogleMapのストリートビューもみんな当たり前のように使っている。でも最初にセルゲイ・ブリンが「世界中の道の写真を連続で撮ってそれを地図にリンクしてウェブ上からそこに立っているように道の写真画像を閲覧できるようにする」と言った時、周囲の反応は「そんなアホな」だったという。それが今では主軸事業にまで発展しているのはなんともステキな話だ。

とびきり優秀なスマートクリエイティブ達にその能力をいかんなく発揮してもらうには(ほぼ)実現不可能な目標ぐらいでちょうといいのだ、と。Googleは超巨大企業だが、その内訳は小さな集団、強い個性のクリエイティブ達で成り立っているのだ。

このように個人や小さなチームが大きなインパクトを与える例をシリコンバレーやシンガポールのスタートアップ界隈にいると本当によく聞く。「え?その会社ってこの間まで10人ぐらいでやってたアレだろ?なにそのバリュエーション?」と言うアレである。

本書を読むとホントによくそこまでいろんなことに手を出してるなー、と感心する。有名なGmailやAndroidだけでなくGoogle Waveなど鳴かず飛ばずで終わったプロジェクトもあますことなく紹介されていて面白い。

前述のJ、A、Tとソファーでこの本について意見交換したことがある。Tの意見はGoogleを正確に描写しているのではなくシュミット氏の理想を表明している割合が含まれている。Tは元Googleで働いていたので「ちょと違うんじゃね?」と思うことがあったそうだ。それでも本に掲げた理想がGoogleに限らず次世代の会社で働く人達に示唆をもたらすという点で、この本はアリだ。とのことだった。

私も正直、本当にGoogleがこんな会社なのかどうか、よりも著者が考えたコンセプトが旧来型の会社のとはまったく異なるのでそこに惹きつけられた。
ITエンジニアを筆頭に今後どんどん「遊んでいるだけのような仕事」が増えてくる世界を生きる上で参考になる本だった。

How Google Works

How Google Works

英語もわかりやすかった。もし英語Okな人は英語版をどうぞ。

How Google Works

How Google Works

  • 作者: エリック・シュミット,ジョナサン・ローゼンバーグ,アラン・イーグル,ラリー・ペイジ
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2014/10/17
  • メディア: Kindle版
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