ベルリンのITスタートアップで働くジャバ・ザ・ハットリの日記

日本→シンガポール→ベルリンへと流れ着いたソフトウェアエンジニアのブログ

映画「イミテーション・ゲーム」はすべてのエンジニアのココロをグッと掴んで離さない

移転しました。

映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」にはエンジニアのココロを掴んで離さない何かがある。もしあなたがエンジニアもしくはモノ作りに関わっているのなら、これは必ず観るべき映画だ。

暗号化の仕組みを使ったパズルシリーズを作って、またRSA暗号の仕組みを解説したブログ記事なんかを書くうちにふと「一体こんなすごい数学的仕組みを考えた人達はどうやって考えたんだろ?」と思うようになった。暗号の仕組みを知れば知る程、「これを最初に考えだ出した奴って超天才だな」の思いを強く持つようになった。普通の人間にはこんなの考え付かないって!
で、映画観た。

あらすじ

「イミテーション・ゲーム」は、実在したイギリス人の天才数学者アラン・チューリングが、第二次世界大戦中にドイツ軍の暗号エニグマを解読するという実話を元にした映画。アラン・チューリングがいなければ、今日の「コンピューター」は存在していなかったかもしれない。アラン・チューリングはコンピューターの概念を初めて理論化し、「絶対に解けない」と言われれいたエニグマの暗号解読により戦争を勝利に導いた。しかし彼の生涯は、罪に問われた同性愛者としての私生活やさまざまな説が流れる死まで、波乱万丈なものだった。

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みどころ

映画としての完成度が高く、各映画賞を総なめにして、脚本も俳優の演技も素晴らしいの一言だが、ここにはあえて書かない。そういうのは他の映画レビューサイトでも見れば山ほど書いてある。ここにはあくまでエンジニアに向けた「みどころ」だけを書く。

ついつい「オメーなんかにこれが分かるか!」と叫んでしまう

アラン・チューリングは軍の偉いさんから任命されて、高額な予算を投じて暗号解読のためのマシンの作製にとりかかる。だがいつまで経ってもその成果が出ない。暗号解読プロジェクトの実権はその軍の偉いさんが握っているから、アラン・チューリングとそのスタッフ達は偉いさんに事を荒立てて欲しくなくて、なにかと気を使う。

ところがある日、マシンの視察に来た偉いさんがこう言う。

偉いさん「なにこれ?なんか解読できたの?まだだろ?予算どんだけ使ってると思ってんの?」
キレたアラン・チューリング「私の創っているモノの重要性はあなたには絶対に分からない!」

このシーンでなんか涙出た。エンジニアやってればレベルの差はあれど、こういうのあるのよ。
技術内容分かってない人ってそこにかけた工数とか技術的考察とか一切なく、3秒思いつきみたいなので結論めいたこと言ったりする。その一言でエンジニアがそこに何ヶ月も投入した時間と技術が全部フイになってしまいそうになるんだけど、その根拠は考えた結果じゃなくて「瞬間的な思いつきだけ」みたいなのが。

やっかいなことにそういう困ったちゃんが無駄にポジション高かったりしたら最悪。さすがに映画みたいに本当に叫ばないけど、心の中で「私の創っているモノの重要性はあなたには絶対に分からない!」と絶叫した経験はどんなエンジニアにもあるのではないだろうか?

そういう経験と映画のこのシーンが重なるとなんか涙を誘うのだ。
 
 

自分の創ったモノへのヤバい愛情

アラン・チューリングはなんとか暗号を解読しようとするが、戦争中の極秘のプロジェクトであり上手くいかないことが続くとすごいストレスが溜まって仲間内でもケンカになる。ある時、仲間のひとりが「こんな役立たずのマシンに付き合ってられるか!」となって、マシンを金槌でぶっ叩いて壊そうとする。それをアラン・チューリングが体を張ってマシンを守ろうをするシーンがある。

普通の男性だっら「そんなことやめろ!」とか言って押しのけるのだろうが、アラン・チューリングはゲイだ。マシンを壊されないように守るその守り方がまるでゲイなのだ。

言ってみれば「アタシのマシンを壊したりしないで!イヤよ!(オカマ声)」という感じ。

そこはゲイだからって訳でもないのだが、とにかくアラン・チューリングの自分の創作物に対する異様な愛情を強烈に感じてしまうシーンだった。こういう感情はモノ作りをしたことのある人なら誰もが共通して持っている気持ちだろう。

幼少の頃なんかはオカンにはガラクタにしか見えないプラモデルでも、少年にとっては自分で創った世界で唯一の最高の飛行機だったりするのだ。オカンが捨てようとしたりしたら、それこそアラン・チューリングのように阻止しようとする。そうした自分の創作物に対する愛情はたとえ大人になってもエンジニアなら持ち続けているモノだ。

映画を観たらおもいっきりゲイっぽいリアクションを取るアラン・チューリングに対して「ゲイじゃなくても、そらそうなるわ」と深く共感するだろう。
 
 

なんでマシンが動くだけでこんなに感動してしまうのか

実話を元にしているし、歴史が示すように最後はマシンによる解読に成功する。で、その成功する瞬間がなんともエンジニア魂が揺さぶられるのだ。

モノ創りをやっていると、どうしてもうまくいかない時があって場合によっては長期間にわたって同じ問題に悩まされることがある。本当にツラい時期を過ごすことになるのだが、その技術的課題をひとつひとつのりこえて最後の最後でエラーなくモノが完成する瞬間というのがある。「よっしゃああああ!できたぁあああ!!」という瞬間だ。この瞬間のためにエンジニアをしていると言ってもいい、エンジニア冥利に尽きる、アノ瞬間だ。

映画では人の命がかかっている、国家レベルのすごいプロジェクトだ。「テメーのスタートアップの人命になんの関係もないウェブアプリ企画なんかと同列に語るな」と言われたらそれまでだが。。。

とにかく映画でアラン・チューリングの解読マシンの動く瞬間は自分のことのように感情移入してしまった。創ったモノの完成の瞬間はそれが偉大な創作物であればあるほど、感動的なのだ。
そんな瞬間を見事に演出してくれた映画「イミテーション・ゲーム」をすべてのエンジニアにオススメしたい。

いやー久々に映画観て心底感動した。

こちらは本。

チューリング

チューリング


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