ベルリンのITスタートアップで働くジャバ・ザ・ハットリの日記

日本→シンガポール→ベルリンへと流れ着いたソフトウェアエンジニアのブログ

『エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢(著:竜盛博 )』書評

もし海外でエンジニアとして働くことのメリットとデメリットを本当に知りたかったら「こんなブログを読むよりもアマゾンのKindleに本書をダウンロードして読めば、それで十分だろ」と思った。

著者の竜盛博氏はアメリカで15年エンジニアとして働いてこられた。会社は社員10名のスタートアップからアマゾン、マイクロソフトなどの大企業まで様々な規模の会社を渡り歩いてきている。そうした経験を元に書かれたのが本書。転職前の準備からはじまり、エンジニアの待遇、外国人としての働き方、技術面接のこと、クビのこと、あらゆることが著者自身の体験を元に書かれているので今、海外で働いている私としても「いや、それはちょっと違うんじゃね?」などと思うところがまったく無かった。

実は海外で働くことに関する文章を読んで、これほど違和感をいだかないのは本当に珍しいのだ。

これは私がブログを書く動機にもなっていることなのだが、「海外で働くこと」について書かれた記事には「?」と感じるものがあまりにも多い。その理由のひとつは、海外転職はお金がからむので、そこに営業が入り込んでしまうことが挙げられる。海外転職を計画する人は概してそのお給料は高い。するとその間に入る転職エージェントのフィーも高くとれる。海外への転職を促す、海外向けの転職エージェントだが、別に悪いことをしている訳ではない。社会にも必要とされる立派な仕事だ。
ただそこで営業のために書いた文章を記事として「海外転職とはこんなのです」と紹介した場合、読む側はそれを営業トークとして読まなければならない。ケータイやスマホの契約で「端末代は無料!!」となっていても、ほとんどの人はそれを営業として理解して、なぜ無料なのかとそのカラクリを分かった上で見ているのと同じ。
これらを営業トークとして理解できる人はいいが、なにぶん海外で働くことの情報が不足している人にとっては営業トークと現実との区別がつきにくい。商売としては情報を持つ人が情報を持たない人に売るのはとても簡単でオイシイのだ。転職エージェントに限らず、そんな海外で働く系の記事を実際に今、海外で働いている人が読むと「なにも知らない人をそんなに煽って大丈夫かいな?」の感想が次から次に湧き出る。

本書はその点、実に公平だ。そしてなぜ著者が海外でそこまで活躍されているのかが、分かりやすく解説されている。いわゆる○○ができれば全てOkというような単純な論調ではない。英語にしても技術にしてもそれらが相互に作用して、実践できてこそ意味がある。著者にしても帰国子女ではなく、ずっと日本で教育を受けてこられた、いわゆる「大人になってから英語を勉強した」方だ。で、アメリカの会社にしても、日本からきた非英語ネイティブのエンジニアに対して求めている英語と、求めていない英語とがある。そのあたりの実情が現場のエピソードを交えて丁寧に解説されている。

また本書はブログと違って本になっていることで系統立てて、海外で働くことの内容が整理されており「海外で働くとか一体どんな感じかね?」の疑問にはしっかり答えてくれている。もし私が日本に居るときに本書に出会っていたら、変な遠回りをしてモガくことが2割ぐらいは減っていたのでは?と思った。

本書から

最近は日本のソフトウェア業界でも人材の流動化が進んでいるようです。
国境を超えたさらなる流動化と働く人たちの適材適所が、少しでも
促進されることを祈っております

 
 
私もこんなブログではあるが、多少なりとも思うことがあって海外で働くことについての紹介記事を書いているので、この1文には感銘を受けた。そうなのだ。日本で働いている優秀なエンジニアの中には残念ながら適材適所になっていない場合があるはず。本書が示すように海外の仕事場での、飲み会無し、残業なし、時には家で働く環境で、その製品のマーケットを英語圏にして働くことで「ここが適所だ!」となる人が中には居るだろう。本書を読めばその適材適所はおおいに促進されることを確信した。

いやーこんなにいい本に出会ってしまうと、こんなブログ書く意味無くなったかな?というのが正直な感想。

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