ベルリンのITスタートアップで働くジャバ・ザ・ハットリの日記

日本→シンガポール→ベルリンへと流れ着いたソフトウェアエンジニアのブログ

スペインの美食の街で食った「世界一美味いアイスクリーム」から学んだマーケティング

移転しました。

ジローナという名のスペインの田舎街があって、そこにある「世界一美味いアイスクリーム」とやらを食って味も風味も素晴らしかったのだが、それ以上に「実にいいマーケティングだな」と心底感心してしまった。

ぶっちゃけ仕事も趣味も楽しみもコーディングという人間なので趣味らしいモノがまったく無い。唯一あるのがヨーロッパを周ってとにかく美味いモノを食うこと。他に何もないのでここにはまーまーな情熱を注いでいる。

スペインのジローナという街に「世界一美味いアイスクリーム」があると聞いて行ってきた。そのアイスクリームは元々はミシュランの星がついてるレストランのメニューだったのが、あまりに好評なのでアイスクリーム店舗として出すようになった、と。

ジローナは歴史を感じさせる城壁に囲まれた小さな街で昔の町並みがそのまま残されている。田舎ではあっても美食の街としても有名でミシュランの3つ星レストランとかもあって、たくさんの美食家と観光客が訪れる街だ。

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街のどこを歩いてもこんな感じで雰囲気がいいので、店に行く前から「美味いモノはどこだー?」とテンションが上がる。やはりどんなに美味いモノでも、その美味いモノに出会うまでのプロセスも大切。

で、Googleマップが示す場所に着いたらアイスクリーム屋の外観はこんな感じだった。
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さっそく注文して出てきたアイスクリームがこれ。
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一口食った感想は「え?これはアイスクリーム…なのか?」だった。確かに香りも舌にとろけていく感じも最高だ。でもこれはアイスクリームというより少し冷たくて香りのいい生クリームじゃないのか、と。そのうちにどんどんアイスクリームのこの妙な感覚の虜になっていってスプーンですくって口に運ぶ動作が止まらなくなっていった。

食べ終わった後、空になったカップを眺めながら「これは完全にやられたな」と感じた。

まずこのアイスクリームは「世界一美味いアイスクリーム」と名売っていて、職場の同僚スペイン人も知っていたし、かなり過激なキャッチコピーではあるがそれがウケて世に浸透した。実際に私もそう聞いて足を運んだ。すると店に入る前から客の期待値は「ここって世界一だー!」と跳ね上がってしまっている。もう食う前から「ただのアイスクリームでは許さんぞ」状態だ。

だいたいアイスクリームなんて普通にしてても美味しいし、子供にも大人気だ。チョコチップを加えるとかカカオを降るとか、そんな小手先の工夫ではここの客の期待に応えることなんてできない。アイスクリームをどこまで極めたところでたかがしれている。「まー美味いけど、これだったらコンビニでハーゲンダッツ買って食ったってええわ」と言われていまうリスクがあるのだ。

そこでこの店がやったことは「これをアイスクリームと呼んでいいのかどうか」というギリギリのポジションを取ること。

そうすることで「コンビニアイスと一緒にすんなよ」「テメーがいままで食ってきたアイスとウチのアイスとは違うんだぜ」を示すことができる。

そういう独特の路線でやろうとする店は他にもある。すごい変わったラーメン屋とか、奇抜な格好のウエイトレスが居る居酒屋とかだ。でもそういう独自路線が必ずしも当たるとは限らない。あまりに独自路線すぎると客がヒイてしまうからだ。「なにこの変な店。ヤバー」という風に。

このアイスクリーム屋には普通じゃないアイスクリームを高い値段で出しておきながら「アカンなー」と客に突っ込まれる要素がひとつもない。全てが絶妙だった。

アイスクリームを食った後でもう一度ふりかえって店を見ながら心の中で「確かにあなたのお店は世界一美味いアイスクリームと言うだけの資格をお持ちですね」と全面的に降参してしまった。

こういうギリギリで絶妙なポジション取りはウェブアプリのマーケティングにおいてもきっと有効だろうな、などと考えてジローナの街を歩いた。


お店のウェブサイト
ROCAMBOLESC

 
 

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