ベルリンのITスタートアップで働くジャバ・ザ・ハットリの日記

日本→シンガポール→ベルリンへと流れ着いたソフトウェアエンジニアのブログ

【読者質問 11】海外転職において専攻はコンピュータ・サイエンスであるべき?

移転しました。

ご質問ありがとうございます。まずは質問から。

はじめまして。大学などの専攻に関して質問させてください。
海外で働こうとする際に「大学あるいは大学院でコンピューターサイエンス(CS)を専攻していることは重要」と言うのはよく聞く話です。

そこで質問なのですが、「CSを専攻していること」と言うのはどの様な意味で重要なのか教えて頂けませんか?
CSに分類される学問に属していたことが重要なのか、実際に研究して出した論文の内容がCS寄りであることが重要なのか、採用とVisaに絡めてよろしくお願い致します。

まず「コンピューターサイエンスを専攻していることは重要」というのはITエンジニア職においては本当の話。ベルリンのような国際都市で多国籍なエンジニアチームと仕事をしているとほとんどのエンジニアが大学時代はコンピュータ・サイエンスを専攻していたのが実情。

そしてこの回答を詳しく説明するには「ビザの問題」と「採用基準の問題」を分けて考える必要がある。まずは採用基準から回答すると、中途採用の場合は学科や学部、大学がその応募者の選考に大きく影響することはほぼ無い。アメリカのとても有名な大学をトップの成績で卒業した、とかなら別だがそうでもない限りは基本は大学名や専攻内容を採用基準にしていない。採用基準にされるのはあくまでその人が持っている技術であって、学歴ではない。

それでも海外転職に挑戦して面談をするときっとこの質問を受けると思う。私も何度もこのセリフを聞いた。
「ところで大学で何を専攻してたの?え?コンピュータ・サイエンス?じゃあ完璧だ。」

これは「コンピュータ・サイエンスを専攻した人=優秀な人」と言う意味では決してないので勘違いしないこと。ここで言う「完璧だ」は100%ビザに関すること。

ビザはその国の制度にもよるが就業予定の職種と大学で専攻していた内容に関連性があることが基本的には求められる。例えば「文学部で文学を専攻して、ITエンジニアとして仕事するつもりです」とやってもあまりに関連性が無いので大学の卒業資格がビザでは使えなくなる。そういう意味でITエンジニア職に応募した人の専攻内容がコンピュータ・サイエンスであると、ビザ申請がカンタンに通るのだ。

工学部であればちょっとはエンジニアに関係ありそう、と捉えてもらって例えコンピュータ・サイエンス学科でなくてもビザの基準を満たしているとなるケースが多い。(その国の制度による)ほとんどの日本の大学は学部を「情報工学部」とか漢字で表しているので、その英語訳がどうなっているのかは学生は意識していない。そこはしっかりチェックした方がいい。あんまりITに関係無いかもなー、なんて思っていてもなぜか英語訳に「Computer」とか「Information Technology」とそれらを連想させる英単語が入って入ればITエンジニアとしてのビザ基準を満たす可能性が大いにあるのだ。ちなみに英語訳は大学のウェブサイトでも確認できるし、正式には英語版の卒証明書に記載されている。

また以前、勤めていたシンガポールのIT会社にてとあるブラジル人がマーケティング部門に応募してきた。みごとに選考プロセスを通過してオファーを出したのだが、その人はアメリカの大学でスポーツビジネスを専攻していた。その会社の商売はITであって、スポーツビジネスにはまったく関係が無かった。とても厳しいシンガポールのビザ基準を通過するのは困難であることは予想された。ところが会社の人事の人とそのブラジル人応募者が一緒になって、シンガポール政府に「会社がスポーツ分野に進出する可能性もあるかもしれないし、なによりそういうスポーツビジネスの興行の仕組みを当社のITにも応用していくのが戦略であって、ぜひともこの人材が必要なんです!」みたいな文章を作って、強烈にプッシュしてビザ申請していた。そして結果はみごとにビザを獲得していたのだ。

つまりは一旦、会社からオファーをもらえばその後のビザ申請は会社と協力して行うことになる。会社としてもせっかくオファー出した応募者をビザが取れずに逃す、なんて事態は避けたい。なのでオファー取得後は会社も協力してれるはずで専攻内容が多少は畑違いであっても、まったく望みが無いとは言い切れない。

結局、働く場合において重要なのは学部の英語訳だけだったりする訳で、ご質問にあった「CSに分類される学問に属していたこと」とか「実際に研究して出した論文の内容」というのはエンジニア職においてはどっちもあまり重要ではなかったりする。私も何度もエンジニアの応募者に技術面談をしているが、応募者が書いた論文を読んだことなんて一度も無い。エンジニアの場合は論文よりもまともに動くコードが書かれたGitHubの方がよほど重要になるだろう。

世界各国から応募者が集まる多国籍チームの場合、その応募者の過去の学歴というのは国によってまちまちでアテにならないのだ。ウクライナの大学での成績や専攻内容とアルゼンチンの大学と専攻内容を比較して優劣が付けれる奴なんていない。そんな意味不明なことはしないで、コーティング面談で技術力を測った方がよほど正確に即戦力が把握できる。

と、これはエンジニアの話であってもし研究職に応募される予定であれば、論文はとても重要なのでそこはご注意ください。

以上が「海外転職において専攻はコンピュータ・サイエンスであるべき?」の回答でした。

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