ベルリンのITスタートアップで働くジャバ・ザ・ハットリの日記

日本→シンガポール→ベルリンへと流れ着いたソフトウェアエンジニアのブログ

【読者質問 07】独学でエンジニアになれる?

ご質問ありがとうございます。

大学で計算機・情報科学を専攻せず書籍やWebの情報での独学のみで、エンジニアとして一人前になれるという意見がありますが、現在もそれは有効だと思いますか?

有効です。

というより独学以外でなにかを習得する方法ってほとんど無い気がする。大学でコンピュータ・サイエンスを専攻したのは遠い昔になってしまったが、思い返しても先生から教えてもらったことで今の職場で役に立ってることはほぼ無い。基礎的なアルゴリズム論なんかの講義も受けていたが、本当に理解したのは自分で本を読んでコード書いて習得したのがほとんど。

私が大学に行っていた当時は今ほどAIが騒がれていなかったのにある先生がやたら熱心にディープラーニングの理論を説明していた。当時は「ふーん」ぐらいの感覚で、これが日の目を見るのはまだもうちょっと先だな、ぐらいにしか思っていなかった。それが今のAIブームを考えると、そういうやたら目利きがいい先生に出会って未来技術を紹介してもらえるのは利点かもしれない。ただその先生の講義は私の他にも何人も履修していたが、今のAIブームを先読みしてなにかの利益を得た奴ってほとんど居ないと思う。

アメリカのスタンフォード大学もすごい数の講義をネットに公開していて私もいくつかコンピュータ・サイエンスの講義をネットで視聴した。先生によっては面白い人がいてアレはまーまー楽しい。しかも無料。

大学生の頃に「偏微分方程式」がよく分からなかったので、クラスに居たちょっと賢い奴と長時間に渡って「こういう意味じゃねーのか?」とか議論して勉強したことがある。で、今ウィキペディアで偏微分方程式のところをちょっと読んだ。「一体アレはなんだったんだ」と懐かしくも、大学の効果というのは「偏微分方程式というものがあるからコンピュータグラフィックスやる前に理解しとけよ」と命令されただけで、後はほぼ自習だったことを思い出した。

偏微分方程式 - Wikipedia


こうして考えれば考えるほど大学という場があって、そこに足を運んで講義を受ける形式の授業が非効率に思えてしょうがない。それぐらい今のネットを使った学習環境が良すぎる。MacBook買ってネットに繋げればもう完璧で後は他になにも要らない。なので私としては独学こそが学習で、それこそがエンジニアとして一人前になれる方法だ、と。
それと学校卒業してエンジニアになっても、独学を一切しないで学校で学んだことだけで食っていけてる人なんて居ないと思う。

ちなみに海外転職においてはどうしても学歴が必要になる場面が多いので、それとは別の話としてご理解を。

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【読者質問 06】海外転職の給与交渉と相場は?

ご質問ありがとうございます。

質問コーナーの設置を、大変嬉しく感じております。
早速、質問をさせて頂きます。
海外での転職の際に、給与の交渉はどうされているのでしょうか。
また、その地域の相場と比較し、自分の水準をどのレベルに置くかといった判断は、どういった点を重視されるのでしょうか。
また、交渉にあたり、日本と異なる点や注意点などがあれば、教えて頂けないでしょうか。

私の場合は転職の際に交渉らしい交渉はしていない。まずオファーをもらう前に給与の話が出たら一応「現行の給与以上」とだけ言ってるが、「最低でも**ドル以上はくれよな!」とか強く言うなんてことはなかった。それと日本でも「おい、オレの給与は低いぞ。上げろよ!」とかやったことも無いので「日本と異なる点や注意点」と聞かれてもそういう経験と知識を持ち合わせていないので回答のしようがない。「その地域の相場と比較し、自分の水準をどのレベルに置くか」とかもほとんど意識していない。まー楽しく働いて英語圏だとITエンジニアの給料はそれなりにいいし、これでいいかな、ぐらいの感覚しかない。

きっと質問者さんの期待していた回答とは違うと思う。「なんだこいつ。しょぼいな」と思われたかもしれないが私はそんなにガツガツ交渉できるタイプでもないし、これぐらいしか言えない。

ただ英語圏のビジネスマンは給料でもなんでも交渉する、という話を聞いたりするが現実のニュアンスはちょっと違う気がする。確かになんでも声に出してアピールする文化ではある。しかしそれらが全部「交渉」に含まれるとは思わない。現実は「エリートっぽい人でも実績で評価される労働環境にいるので、それが交渉してがんばっているように見える」のだと思う。

ひとことでは伝わりにくいので以下に説明します。(ぼわっとした印象の話なので数字的根拠は無し)

日本ではエリートほど露骨に実績で評価されてしまう職種にはつかず、社会的地位が高そうなところに集中している印象がある。例えば東大を出て、お家柄もいいお坊ちゃまがいたとして、そういう人が営業職に付く例はあまり無い。営業というのはどんなにそれまで受験勉強をがんばってきたとしても、ちっとも勉強しなかった連中と横一線にならんで、よーいドンで売ってくる仕事だ。その成果はハッキリとA君は**円の売上、Bさんは**円、でエリートお坊ちゃまは**円だけですー、え?東大出?そんなこと知るか!もっと売ってこいボケー!となってしまう。

しかし英語圏ではエリートほどそんな感じのガンガン評価される環境に飛び込んで行く。そういう環境の方が給料が高いというのも関係しているのだろう。「いい大学出ていいコネと知識があるんなら、この職場で実績出しやがれ。できなければ当然クビな。テメーには高い給料払ってんだ!じゃあ後はよろしく」という職場があっても怖気づくことなくやってくる。

コードを書きまくるエンジニアも間違いなく露骨に評価される職のひとつ。どんなに学歴の高いお坊ちゃまであっても、クソなコード書いてバグを連発する奴だったら「お勉強はできるか知らんがエンジニアとしては使えない」となる。この記事に書いたように英語圏では日本のSEにあたる職が無く、コードも書けないのに上級職に付くことはできない。仮に上級職に付いていてもコードが分かってない時点で「バカだなこいつ」と思われたあげくに降ろされるのがオチ。エンジニアがコード書いてGitHubに上げてレビューされるのってもう毎日が評価の連続みたいなもんだ。

こうしてエリート達も露骨に評価されて切磋琢磨しなければならない仕事に付くので全体として「英語圏では給料でもなんでもバリバリ交渉してるのか?」みたいな印象になるのだろうと思った。

海外転職の給与交渉と相場についてはあまり回答できていないが、今回はこんな感じです。

ところで最初、質問箱を設置した時は「いただいた質問は全てこのブログに掲載してお答え」と書いたが前言撤回させてください。全部はキツい。なるべく答えます、ぐらいで。

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【読者質問 05】海外で働くには実務経験か学歴か?

ご質問ありがとうございます。さっそく質問から

デザイナーとして働いている高卒です。エンジニアの旦那(情報系学部の4大卒)と海外で働きたいと思っているのですが、ビザを取得するのに4大卒資格が必要という記事をよく見かけます。

技術を身につけることに集中してこのまま日本で実務経験を積むか、
日本で実務経験を積みながら芸大もしくは放送大学などの通信に通うか、
はたまた海外の専門や4大に入るか
などで悩んでいます。

主観で構いませんので、ジャバ・ザ・ハットリさまであればどのような選択をするのか教えていただければと思います

これはとても難しい質問ではあるのだが、質問者さんのおっしゃる「主観で構いませんので」が核心を突いている。つまりこの質問には主観でしか答えられない。

答えを結論から言うと、もし私が質問者さんと同じ状況だったら今すぐ現在のスキルで行けそうな海外拠点と職場を探して、CVを送りまくって、面談してなんとかオファーをもぎとって移住する、となる。

例えば海外拠点がアメリカの大都市となると、学歴やその他の条件からとても厳しいことは予想できる。今のアメリカで外国人がビザを取るのは大学院の卒業資格を持っていてもちょっと難しい。しかし海外と言うのはアメリカだけを指すのではなく、アジア、南米、ヨーロッパとどこでも海外になるので探せば必ず自分に合った国が見つかる。最初は勢いでもなんでも行ってしまえば自分に海外暮らしの適正があるのか無いのかがハッキリする。後のことは日本を離れた場所で暮らしてみてから考えればいい。

技術を身につけることに集中してこのまま日本で実務経験を積む、というのもしっかりゴール設定があった方が有効になる。ただ漠然と「海外で働きたいなー」と思って仕事をしても「海外でデザイナーとして活躍するために何が必要なのか」は分かりにくい。そこは海外の会社に向けた転職活動で応募書類を送ったり、面談したりする中で「この国で働くにはこういう技術が必要なんだな」というのが分かってくる。いきなりオファーがもらえなかったとしてもその過程で学ぶことができる。海外の会社からお断りのメールをもらっても、そこで何が足りないのかに気付けば普段の仕事にも気合が入って充実するだろう。日本での就労経験もハッキリとした目標があればとても有用な実務経験となって蓄積されるはず。

後は学歴について。確かにご質問者さんが言うように大学に入って、卒業資格を得るというのも選択肢のひとつとしてはアリだ。そこは否定しないし、実際そういう道を進んで成功されている例がたくさんある。むしろそっちの方が正攻法かもしれない。比較すれば学歴がある方が移住がしやすいのは確かな話。しかし17歳の高校生ではなく社会人である質問者さんが学歴のために時間を使って大学に行く価値が本当にあるのか、と疑問に思う。

最近、日本人の友人がアメリカのとても有名な大学のMBAコースを卒業した。元々勉強がよくできるヤツではあったが、よくあんな大変な大学のMBAを無事に取ったな、と感心していた。きっとこれからアメリカのエリートコースを爆進するのだろう、と思っていた。が、彼女は日本に戻って就職活動する、と言っていた。色々事情はあるのだろうが、アメリカの大学のMBAホルダーであっても今のアメリカで職を得るのは相当に難しいらしい。もし彼女の履修したコースがMBAではなくコンピュータ・サイエンスだったらもう少し容易に職が得られたことは想像に難くない。ただ数年前は猫も杓子も「MBA!MBA!」と騒いでいた気がする。

別に「MBAが全て無意味だ」とまでは思わないが、どんな学科にも時代によって流行り廃りがあるということだ。そんな面倒なことはすっ飛ばして今スグ行けそうなところへ飛び込んだ方がいいと思う。

いろいろ動いてみれば自ずと道が見えてくる。例えば質問文にあった「エンジニアの旦那(情報系学部の4大卒)」と完璧なので、この旦那にヨーロッパでEUブルーカードを取らせるのもひとつの方法。EUブルーカードというのは高資格外国人用のビザみたいなモンで夫か妻のどちらかがEUブルーカードを持てばその配偶者もEU圏内での就労の権利が得られる。つまり旦那さえEUブルーカードを取れば質問者さんはヨーロッパで働くことができる。高資格外国人というのは職種が数学、情報処理、自然科学、工学分野の研究者や医者、技術者、エンジニアでしかもある一定以上の給与をもらっていることが条件になる。

EU諸国で働くための「ブルーカード」

高資格外国人という表現がハードル高い感じがするが、ヨーロッパの都市のまともなITエンジニアであればブルーカードの基準給与はほぼ超えることができる。今の世の中はエンジニアが優遇され気味だが、それがいつまで続くのかは分からない。だったら取れそうなうちに旦那にブルーカードを取らせるのもひとつの手だろう。こういう時は使える物は犬でも旦那でも使えばいい。

と、ここまで回答を書いて再び悩んでしまった。大学に行くという正攻法を捨てるのが本当に有効なのだろうか、と。質問者さんの人生に影響しそうなことなのに無責任すぎないか、と不安になった。

今の職場であるベルリンのITスタートアップには2人のデザイナーが居る。イタリア人とフランス人。この質問の回答に参考になるかと思って彼らにも話を聞いてみたら、2人とも大学でデザインを専攻し卒業していた。ただEU人である彼らはEU圏内は自由に移動できるし就労にビザは不要だから、そこはあまり参考にならない。分かったのは2人とも大学卒だということ。近年のより学問的理論に支えられたデザインにおいては学歴が重要である、との結論で一致していた。彼らの意見は、現実的に考えて質問者さんはまずインターンへの応募になる、と。実務経験1、2年でジュニアレベルへのエントリーは語学も含めて難しいだろう。ただ経験を積んでシニアレベルのデザイナーにまでになれば北ヨーロッパで職を得ることにほぼ困らない。これは近年のデザイナー需要の高騰が背景としてあるらしい。
彼らの話を聞いて「じゃあ、やっぱり大学に行った方がいいと考えるべきなのか?」と思ってしまった。

質問を読み直してもう一度考えた。かなり考えた。そこでふと気がついた。
冒頭に書いたようにこれは前提として「もし私が質問者さんと同じ状況だったら」だ。そうであれば私だったら大学には行かない。ここはハッキリしている。私なら働きながら虎視眈々と海外を目指す。なぜなら私にとって大学で4年かけて学んだ内容と、海外に出て外国人達と共に働いた4年を比較すると後者の方がよほど刺激的で楽しく何十倍もの学びがあったからだ。なにがその人の人生を豊かにするのか、は人それぞれ。私にとってはそれが異国の地で、自分とまったく異なる人達と働き生活することになっているし、今後もそうしたいと考えている。基本的な考え方として「周到な準備と完璧な計画」にあまり意味は無いと思っていて、常にモットーは「まずはやってみること」というのがある。
このやり方が他の人からすると賢いやり方に見えないのは百も承知。それでも私だったら、大学に時間を使わないで今スグ海外に出る準備をして出る。今スグ出る。

これが私なりの答えです。ぱっと思いついて書いた回答ではなく、人の人生に関わることなのでかなり熟考した上で書きました。

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ということでだいぶ質問を受けるのがキツくなってきた。最初はあんまり来ないだろ、と思ってたのに意外にたくさん来たし。ありがたいことに違いはないが、どの質問もその人にとっては大切なことのように思えて、テキトーに回答書く訳にもいかずド真剣に考えて書いている。

相談における「役立つ回答」を編み出すための方法論と分析思考ならこれ。人の質問に本気で向き合って答えなければならない状況になると改めてこの本はいい本だな、と思った。

悩みのるつぼ〜朝日新聞社の人生相談より〜

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