エンジニアとしての生き方戦略本『Soft Skills』

『Soft Skills』は主に英語圏におけるエンジニアのキャリアや生き方についてやさしい語り口の英語で解説した本だ。ここで言うソフトスキルのソフトとはソフトウェアのことでない。人とうまくやっていくためのスキル（＝Soft Skill）のことだ。で、この本は今の勤め先のオフィスの本棚ではなく、ソファーに置いてあることが多い。

Soft Skills: The Software Developer's Life Manual

シンガポールの小洒落たスタートアップのオフィスにはたいていエンジニア達が休憩するためのソファーやゲーム、ピンボールの台なんかと一緒にお菓子が置いてある。そこはあくまでリラックスする場にしているので小難しい技術書なんかは置いていない。そういうのは本棚にある。でもこの本だけはよくソファーにぽいと置いてあることが多い。単に片付けないエンジニアが放ってるだけかもしれないが、本書の内容も理由のひとつだろう

要はリラックスして読める内容なのだ。エンジニア向けの本だが書かれているのは技術に関することではない。エンジニアとしてどう生きるか、についてだからだ。

目次を抜粋したので見ていただくと概略がつかめると思う。
　
　
5. HACKING THE INTERVIEW
転職面談のハッキング方法

7. WHAT KIND OF SOFTWARE DEVELOPER ARE YOU?
あなたはどんなタイプのソフトウェア技術者か？

9. CLIMBING THE CORPORATE LADDER
出世の階段の登り方

11. FREEDOM: HOW TO QUIT YOUR JOB
仕事の辞め方

18. DON’T GET RELIGIOUS ABOUT TECHNOLOGY
技術を宗教的にとらえるな

19. MARKETING BASICS FOR CODE MONKEYS
コードモンキーのためのマーケティング基礎

26. DON’T BE AFRAID TO LOOK LIKE AN IDIOT
バカに見えることを恐れるな

31. LOOKING FOR MENTORS: FINDING YOUR YODA
あなたのヨーダの見つけ方

42. BURNOUT: I’VE GOT THE CURE!
燃え尽き症候群：オレは治ったよ

50. HOW TO NEGOTIATE YOUR SALARY
給与交渉の方法

68. LOVE AND RELATIONSHIPS: COMPUTERS CAN’T HOLD YOUR HAND
人との愛：コンピュータとは手を握れない
　
　
この本には小難しい技術解説は一切ない。英語が平易なので気軽に読んでいた。が、この書評を書くために改めて読み返したみたが、ここに書かれていることは英語圏でエンジニアとして生き抜いていく上でとても重要な示唆に富んでいることに気が付いた。

本書より

私の意訳

「うるせーな黙ってろ。オレはコードが書きたいだけなんだよ！」
　　私（著者）もかつてはソフトウェア技術者の仕事というものは
　　コードを書いてなんぼのもんだと思っていた。

例えば日本で活躍する優秀なエンジニアの方が英語圏に住まいや職を変えた際にちょっと躓いてしまったとする。すると「日本の習慣にとらわれずに英語の作法やアメリカ流の方法を学ばなくては」と焦る。確かにその通りの部分もあるが、本書が明らかにするのはアメリカ人エンジニアや英語がネイティブの人だって同じように悩んでいるのである。「オレってコード書いてるだけでいいのかなー？」とかは、前述のオフィスのソファーでもよく話題になっているのだ。

そんなどんな国の出身のエンジニアでもふっと疑問に思うことについて、やさしい英語で解説しているのが本書だ。

英語を勉強しようとしている技術者の方が英語の本を買う際は慎重に吟味した方がいい。なぜならどんな良書でもその英語が難し過ぎて読む気がうせると読まなくなり意味が無いだけでなく、英語の勉強意欲すら喪失してしまう危険性があるからだ。その意味で本書はパラパラめくるだけでも楽しく読めるエンジニア向けの本といえる。

Soft Skills: The Software Developer's Life Manual

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